生活保護訴訟:再び開かれた最高裁口頭弁論で語られたことは?

2013年からの生活保護基準大幅引き下げの取り消し等を求める「いのちのとりで裁判」。9月29日、高裁で原告が敗訴した4訴訟(秋田、神戸、佐賀、熊本)の上告審弁論が最高裁第3小法廷で開かれました。注目のポイントを2回に分けて解説します。
稲葉剛 2026.09.30
誰でも

「いのちのとりで裁判」の現在地は?

第二次安倍政権下の2013年から強行された生活保護費の大幅減額の取り消し等を求める「いのちのとりで裁判」は、29地域で31の訴訟が闘われています。

このうち、大阪と愛知の訴訟について、昨年6月27日、最高裁第三小法廷(宇賀克也裁判長)は、基準引き下げを生活保護法違反と認定し、減額処分の取消しを命じる画期的な原告勝訴判決を言い渡しました。

判決を受け、原告・弁護団は国に対し、真摯な謝罪や差額の全額補償、違法減額が行われた経緯の検証、抜本的な再発防止策の実施などを求める要請書を提出。原告の高齢化が進み、亡くなる人も増える中、訴訟を早期に終結させるため、基本合意書を締結することを求めました。

しかし、国側は首相や厚労大臣が国会で「お詫び」を表明したものの、大臣・副大臣のレベルの責任者が当事者との対面の場で謝罪することは拒否。差額の補償についても、2013年にさかのぼって基準を再減額した上で、一部のみを補償するとの「対応策」を一方的に発表する等、三権分立を踏みにじる対応に終始したため、和解は成立せず、裁判闘争は継続しています。

5地域で新たに勝訴が確定

今年9月16日、最高裁は高裁で原告が勝訴していた北海道・埼玉・京都・広島・福岡の5地域の訴訟について国側の上告を不受理とする決定をしました。これにより、この5訴訟の勝訴が確定しました。

ただ、各訴訟とも、亡くなった原告についての上告は維持されています。特に北海道では、原告であった世帯主が亡くなった後に訴訟を継承した世帯員原告についての判断が留保されており、この点について、今後、最高裁がどのような判断をするのかが注目されます。

最高裁口頭弁論で原告が意見陳述

9月29日には高裁で原告が敗訴した4訴訟(秋田・兵庫・佐賀・熊本)の口頭弁論が最高裁第三小法廷(林道晴裁判長)で開かれました。裁判は結審し、判決の期日は10月23日に決まりました。

9月29日、最高裁に入廷する秋田・兵庫・佐賀・熊本の原告と弁護団

9月29日、最高裁に入廷する秋田・兵庫・佐賀・熊本の原告と弁護団

口頭弁論で各地域の原告は厳しい生活実態を訴えました。

秋田訴訟原告の櫻田雄美さん(64歳)は、引き下げにより「入浴は2、3日に1度に減らし、食事の回数も1日2食に減らしました。最近は物価高騰の影響で、1日1食で済ますこともあります。交際費も削らざるをえないため、香典も用意できず、友人の葬儀にも参列できなかったことには深い悲しみを感じました」と証言。

全国で最も早く2014年2月に提訴した秋田では、提訴時に53人いた原告が12年の間に亡くなったり、高齢や病気療養のために訴訟を継続できなくなった人が相次いだため、最高裁に上告できた人は10人にとどまっていると述べた上で、「多くの人の気持ちを背負って、ここに来ました。ここに立てなかった人の願いも聞いてください」と訴えました。

兵庫県の原告の北風正二さん(88歳)は、減額により日々の食費を節約せざるをえず、90歳近い年齢になっても、毎日、安い惣菜を求めてスーパーを回らなければならない生活のつらさを訴えました。

北風さんは、昨年6月に最高裁判決が出た時には「これで解決する」と安堵したものの、国が全額補償を行わないため、その後も厚労省にたびたび要請をおこなったり、最高裁に兵庫訴訟の早期判決を求める要望をしなければならない状況に陥ったことについて、「国の誤りが確定したのに、ここまでしないといけないとは。こんな不正義はない」と語り、「早く安心して生活をしたい。私のような思いをする人が二度と出ないようにしてほしい」と話しました。

熊本訴訟原告の浅井勝也さん(84歳)も、生活の厳しさについて「食事を安いものにし、風呂の回数も減らした。栄養を考えている余裕はなく、趣味はとうにあきらめました」と語り、「これが健康で文化的な生活なのでしょうか。国の不当な扱いを断罪する判決を求めます」と訴えました。

各地の弁護団からは、昨年の最高裁判決からさらに国の責任を明確にする「踏み込んだ判決」を求める発言が続きました。詳しくは次回で解説します。

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