「家賃高すぎ。何とかしろ!」と言ってもよいと思える社会へ

3月14日(土)「家賃高すぎ。何とかしろ!デモ」が開催され、約200人が新宿の街を歩きました。デモでの和田靜香さんと私がスピーチ。沿道からの飛び入り参加もありました。デモをすることが何が変わるのか、考えます。
稲葉剛 2026.03.15
誰でも

3月14日(土)、首都圏青年ユニオンと「住まいの貧困に取り組むネットワーク」の呼びかけで、「家賃高すぎ。何とかしろ!デモ」が開催され、約200人が新宿の街を歩きました。

沿道の反応も良く、手を振って応援してくれる方や飛び入りでデモに参加してくれた学生もいました。

撮影:小林美穂子

撮影:小林美穂子

サウンドカーの上では、和田靜香さんが迫力のスピーチを行いました。

撮影:小林美穂子

撮影:小林美穂子

皆さん、「家賃が高い」「払えない方が悪い」と思っていませんか?

海外では、家賃補助は当たり前です!上がりすぎたら補助金を出すのは政治の責任です!

あなたのせいではありません。家賃を下げるよう、一緒に声をあげましょう!

家賃を下げましょう!

都庁は家賃補助を今すぐに実施してください。

公営住宅も増やしてください。

東京都は石原都政以降、20年以上、都営住宅を増やしていません。

「土地がない」は言い訳です。専門家は公営住宅を増やせと何度も言っています。私たちは本当に困っています。

高市首相、小池都知事、聴いていますか!一刻も早く、やるべきことをやってください!

私もスピーチをさせていただき、以下の点を話しました。

・中央労福協が昨年実施した「若者の住まいの実態調査」(年収500万円未満。30代以下の働く若者3,000人が対象)では、ひとり暮らしの若者の3人に1人(33.5%)が「住宅費負担をかなり感じている」と回答。年収200万円未満の層では、4割以上にのぼっている。

また、子どものいる既婚世帯では2人に1人(46.6%)が「かなり負担を感じている」と回答しており、低所得者だけでなく、中所得者でも住宅費の負担が高まっていることがわかる。

・民間の相談窓口では、昨年から「更新のタイミングで、従来の家賃の1割以上の値上げをオーナーから通告された」という相談が増えている。東京都も昨年10月より「賃料値上げ特別相談窓口」を設置しているが、相談件数が多く、電話がつながりにくくなっているほどである。

・生活困窮者支援団体には、すでに安定した住まいを失ってしまっているネットカフェ生活者からの相談も多い。ネットカフェなどの商業施設で寝泊まりをしている人は2017年の東京都調査で約4000人と推計されているが、その後、8年以上もの間、東京都はネットカフェ生活者についての調査をおこなっていない。調査によって、「住まいの貧困」が拡大していることが明るみに出ると、支援策を拡充しなくてはならなくなるので、あえて調査を実施せず、問題を可視化させないようにしているのではないかという疑いを持っている。

・生活に困窮した人が生活保護を利用しても、生活保護の住宅扶助の基準(東京都内の大半の地域では上限が53700円)では、年々、物件を探すのが難しくなってきている。家賃の額面は53700円までしか認められないので、やむなく「管理費」「共益費」を4000~5000円に設定して、実質的な家賃を振り分けるという手法も広がっているが、「管理費」「共益費」は生活扶助費から出さざるをえないので、生活保護利用者の間で「食費など生活費を削って、実質的な家賃の一部を捻出しないといけない」という状況が広がっている。そのため、生活保護利用者の家計が厳しくなり、困窮者支援団体の炊き出しに並ばざるをえない人が増えている。制度を利用しても貧困から抜け出せないという状況に支援関係者は苦慮している。

・東京23区で住宅扶助基準の物件が借りられないという状況に目をつけた一部の不動産業者は、都心から離れた多摩地区の西部や千葉、埼玉などの地域で、駅から遠く離れた交通の便が悪いマンション物件を確保し、生活困窮者を囲い込む貧困ビジネスを拡大させている。貧困ビジネスは結果的に生活困窮者を東京23区から周辺地域に追いやる役割を果たしており、ソフトなジェントリフィケーションとも言える状況が広がっている。私たちがデモをしている新宿では、30年前に路上生活者が東京都によって強制排除されるという事件が起こったが、今や低所得者の多くが都市空間から追いやられようとしている。

・生活保護の住宅扶助や求職者向けの「住居確保給付金」の支給額を民間賃貸住宅市場の実態にあわせて引き上げるのは急務である。同時に、公営住宅を増やし、誰もが安心して暮らせる社会にしていく必要がある。

自己責任論を克服し、住宅政策が選挙の争点となる国へ

いつものことですが、私たちが住宅問題についてデモをおこなうと、必ず「そんなことをして何になるんだ」「デモをしている暇があったら、働け」という声が飛んできます。

私は日本において住宅政策の転換がなかなか進まない背景に、この分野において特に根強い自己責任論の影響があるからだと考えています。

2018年に参議院国民生活・経済調査会に参考人として招致され、若者の住宅問題についての意見陳述を行なったことがありました。その場で私は、東京でネットカフェ生活者が増えている背景に、都市部で住宅を確保する際の初期費用が高いという問題があることを指摘。その上で、従来の住宅政策を転換して、若者を含む低所得者層への住宅支援を強化する必要があることを国会議員に訴えました。

私の問題提起に対する各会派の議員の反応はさまざまでした。私の提言に賛意を示してくれる議員も少なくありませんでしたが、中には「ネットカフェに暮らす若者たちは甘えているのではないか」、「きつい仕事を避けているのではないか」と、自己責任論を振りかざしてくる議員もいました。私は住所や住民票がなければ、安定した仕事に就くのは困難であり、まずは住まいの安定を最優先にすることが重要だと説明したのですが、一部の議員は全く聞く耳を持ちませんでした。

このような自己責任論は、貧困対策全般のブレーキ役になっていますが、特に住宅問題については、「住まいの確保は個人の努力で行なうべき」という社会規範が強いと私は感じています。

政府の責任に関する大規模な社会調査では、「住宅の提供」を政府の責任と考える人は39.7%(2010年)にとどまり、「医療」(86.4%)、「失業者の生活保障」(80.7%)の半分以下にとどまっています。

私は以前から「日本における住宅問題の位置づけは、アメリカでの医療問題に似ている」と指摘してきました。健康の維持を自己責任と考え、公的な医療保険制度の導入に批判的な人が多いアメリカ社会は、私たちにとっては奇妙な社会に見えますが、その私たちも住宅については自己責任論を疑問に思わない傾向にあるのです。

こうした現状について、「居住福祉」の提唱者である早川和男さんは生前、「日本人は住宅に公的支援がないことに疑問を感じない。マインドコントロールにかかっているようなものだ」と指摘されていました。

こうした社会意識を変えていくためには、まず私たち自身が「高い家賃を何とかしろ!と口に出して言ってもよいんだ。住まいの問題は自己責任で解決すべき問題ではなく、政府や自治体に対策を求めてもよい問題なんだ」と思えるようになることが最も必要です。

「家賃高すぎ。何とかしろ!デモ」は、住まいの確保を自己責任とする日本社会の「常識」を変えるための第一歩だと考えています。

政府や東京都に対策を求めるオンライン署名は継続中です。今後、申し入れ行動もおこなっていきますので、引き続き、ご注目ください。

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